書評 『天皇制以前の聖徳太子』
金田小夜子 : 2012/05/27(Sun) 17:29
No.265
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[書 評] 金田小夜子
『天皇制以前の聖徳太子─『隋書』と『記』『紀』の主権者矛盾を解く』 半沢英一著 ビレッジプレス (1575円+税)
2009年に司馬遼太郎の歴史観に疑義を呈した『雲の先の修羅─『坂の上の雲』批判』を
上梓した著者は、古代史にも造詣が深く多くの論文を発表している。翌年には本職の数学
的手法を駆使した『邪馬台国の数学と歴史学─九章算術の語法で書かれていた倭人伝行路
記事』を出版、続いて昨年著したのが本書である。古代史好きには必読の書と推奨する。
内容は正にタイトル通り、中国史書の『隋書』では「倭王」が男とされているのに、
なぜ日本史書『記』『紀』では「女帝推古」が天皇とされているのか?この謎を解明すべく、
著者は長年に亘る資料分析と現地調査を続け、遂に未踏の推論を構築するに至った。
天皇制への問題提起は幾人かの研究者からなされ、著者の関心も強かっただけに明快な
論理と丁寧な説明により、高度な謎解き小説の如く一気に読ませる。無論その力量に対抗
できるだけの基礎知識は読者にも要求されるが、ぜひ紙上の真剣勝負に挑戦してほしい。
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