ソマリア沖に海上自衛艦を出すな! 海賊問題に名を借りた海外派兵新法に反対する!
ご老体 : 2009/02/25(Wed) 06:52
No.10
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ソマリア沖に海上自衛艦を出すな! 海賊問題に名を借りた海外派兵新法に反対する!
声明・論評 2009年1月28日 内閣総理大臣 麻生太郎様 <抗議文> 「ソマリア沖への海自護衛艦派遣」並びに「海賊対策新法案」に反対する 自衛隊イラク派兵差止訴訟全国弁護団連絡会議 自衛隊イラク派兵差止訴訟名古屋弁護団
政府は本日(1月28日)午前中の安全保障会議にて、現行法(自衛隊法82条『海上警備行動』)に基づき、アフリカ東部ソマリア沖の海賊対策として海上自衛隊の護衛艦派遣を正式決定した。同時に麻生首相は、この海上警備行動は「当面の応急措置」であるとして、海賊対策のための新法案を3月に国会提出することを表明した。
私たちは、以下の理由により、「ソマリア沖への海自護衛艦派遣」並びに「海賊対策新法案」に反対し:
法律違反・憲法違反である「ソマリア沖への海自護衛艦派遣」を行わないこと 憲法の平和主義に反する「海賊対策新法」策定の動きを止めること 憲法の平和主義に基づいた包括的な非軍事的対応を速やかに構築すること を求める。
1.「ソマリア沖への海自護衛艦派遣」は必要性も実効性もない 外務省によれば、日本船舶関係の「海賊」被害は、2007年にわずか10件、2008年に9件である。
2007年における被害の内、日本船籍1隻、日本人乗組員1名にすぎない。 被害状況については、「ハイジャックされた事案において、乗組員1名(フィリピン人)が行方不明となった。その他の事案では、武装した賊に乗組員が縛り上げられ、負傷する事案や船用品などの盗難事件が発生。」したと発表している。このような実態からすれば、ソマリア沖での「海賊」行為は、国又は国に準じる組織による武力攻撃などではなく、歴然とした犯罪行為であることは明らかである。
犯罪に対しては軍事力ではなく警察権で対処すべきであって、本来海上保安庁の任務である(海上保安庁法2条)。2000〜2004年に海上保安庁がマラッカ・シンガポール海峡沿岸諸国と連携して海賊対策を行った事例が示す通りである。また、ソマリア沖の海賊対策についても、海上保安庁はすでに周辺諸国に対し法執行能力向上のための人材育成支援をする等の対応を始めている
さらに、2007年の我が国の刑法犯罪認知件数は269万件にのぼり、刑事政策の基本である犯罪対策の費用対効果を考えた場合、わずか10件にも満たない犯罪行為に対して数億円もかけて軍隊を派遣する必要性は全くなく、愚策とかとしか言いようがない。
近時、「海賊」はロケット弾等を持ち、自動小銃で武装しているとして海上自衛隊の出動が必要だという議論がある。しかし、軍事組織は、「敵」の殲滅を目的とし、犯罪者逮捕を目的とする警察とは全く異なる存在である。違憲の疑義の強い海上自衛隊を派遣するより、真に海上警備の必要性があるのであれば、海上保安庁の出動こそが本筋である。
さらに、ソマリア沿岸に各国が軍艦を派兵した後も、海賊犯罪は減少するところか増加しており、国際社会の軍事力での対応に実効性がないことはすでに明らかとなっている。
2.「ソマリア沖への海自護衛艦派遣」は自衛隊法違反であり法治国家として許されない 自衛隊の任務は、現行の自衛隊法3条で規定されている。任務の第一は「直接侵略及び間接侵略からの日本の防衛」、第二は「公共の秩序の維持」、第三は「周辺事態における安全確保活動」、そして第四は「国連平和維持活動に対する寄与」及び「国際社会の平和及び安全の維持に資する活動」である。第三および第四の任務は「別に法律で定める」としている。「海上警備行動」を規定している同82条を含む第六章(自衛隊の活動)は、当然のことながら、同3条(自衛隊の任務)を具体化するためのものである。
今回のソマリア沖での「海賊対策」のための「海上警備行動」は、同3条に規定されたどの任務にも該当しない。河村官房長官も昨年12月24日の記者会見で「海上警備行動は原則、日本の領海内を想定している」と述べているとおり、第三の任務にも該当しない。もし今回の「海上警備行動」が第三または第四の任務に該当する場合であったとしても、その際は別法の制定が必要となる。法律に規定されていない任務を目的とした行動を命じることは、立法の趣旨を逸脱した拡大解釈にとどまらず、明確な自衛隊法違反である。
いうまでもなく自衛隊の海外任務には憲法9条に由来する制約があり、このため自衛隊法3条は海外任務について別の法律が国会で議決成立していることを条件として初めて自衛隊の任務として認めたものである。かかる自衛隊法の趣旨を踏みにじり、自衛隊法に反することを十分に認識しながら、自衛隊の海外派遣を命じることは、法治主義の根幹を揺るがす暴挙と言わざるを得ず、憲政史上に重大な汚点を残すものであって、断じて容認できるものではない。
3.武器使用要件拡大は自衛隊法違反 今回の派遣行動計画は、司法権を有した海上保安庁職員を海自艦船に乗せて海賊に対処する、としている。保護対象は、(1)日本籍船、(2)外国籍船の日本人乗組員・乗客、(3)日本の船舶運航事業者が運航する日本関係船舶と、そして(4)外国船籍に積載されている日本の積荷も含むとしている。武器使用基準(応戦基準)に関しては、正当防衛と緊急避難に限定した警察官職務執行法7条を準用するとしているが、停止命令に応じない船舶への攻撃などを含め大幅に武器使用要件を拡大している。防衛省は武器使用の具体的基準である交戦規則(ROE)を作成するが、非公開となっている。
自衛隊が武器を保有することができるのは、「任務の遂行」に限られている(自衛隊法87条)。同3条に規定された任務と無関係の目的で武器を保有した自衛隊を派遣すること自体、自衛隊法87条に反する。
4.ソマリアへの海上自衛隊の派遣は、憲法9条1項、2項に違反する (1)憲法9条1項が禁止する「武力行使」は相手が「国または国に準ずる組織」でなく、仮に海賊などの犯罪組織であったとしても、「組織的な武器使用」がなされる限り「武力の行使」となり、憲法9条1項違反となる。
また、自衛権を超えた武力(軍事力)の海外派兵は憲法9条2項が禁ずる「戦力」の派兵にあたり、憲法9条2項違反ともなる。
(2)この点、「自衛権」を根拠に自衛隊の派兵や武力行使を正当化しようとすることも許されない。 そもそも「自衛権」概念は主権概念と不可分のものであり、日本の領域から遠く離れたソマリア沿岸ではおよそ「自衛権」概念は認められず、「自衛権」概念で「武力行使」が正当化される余地はない。
また、国家に準ずる組織的勢力でもない「海賊」に対処するために自衛隊を派遣し、戦闘行動をすることは、「自衛権の行使」とは言えない。
従って、このような目的での自衛隊の海外派遣は、仮に法律を制定したとしても憲法9条1項の「武力行使」にあたるとともに、自衛権を超える軍事力の派遣、すなわち憲法9条2項の禁止する「戦力」の「派兵」にあたり違憲である。
5.各国との共同の軍事行動も目的としており、「武力行使の一体化」となり、集団的自衛権行使にあたる つぎに、日本自らが直接「武力行使」を行わないとしても、他国との共同軍事行動に対する後方支援などを行った場合には、名古屋高裁が、08年4月17日に言い渡した違憲判決と同じ論理により、憲法9条1項の禁止する「武力行使」に該当し、集団的自衛権行使に踏み込むものである。
以上から、今回の派遣行動にとどまらず、仮にソマリアへの海上自衛隊の派兵を行う法律を制定したとしても、かかる法律が憲法9条1項および同条2項に違反することは明らかである。
6.「海賊対策新法案」は憲法の平和主義の崩壊を狙ったものである 今回政府が、自衛隊の派遣を狙っている意図は、他国、とりわけ米国と共同して軍事行動を担う実績をつくることにあるのは明白である。
これまでも海賊対策のために協力してきた沿岸国の警備力への協力、指導などで十分である。ここで、既に述べた敢えて自衛隊法に違反してまで派遣を急ぐ理由は、むしろ、他国との共同の軍事行動への参加の道を開くためとしか考えられない。
政府が目指している今回の「海賊対策新法」策定の動きは、武器使用基準を一気に緩和し、他国の艦隊・軍隊と武力行使の一体化を可能にする。これは、憲法9条が禁ずる「武力の行使」「集団的自衛権の行使」を既成事実化・常態化することになり、憲法の平和主義の崩壊をまねく。
7.おわりに
海賊対策は「軍事力」で一時的に抑える対処療法では、なにも解決しない。海賊を生み出している根本要因への対応なくして問題解決はない。ソマリアは1991年以降、氏族間の紛争、混乱が後を絶たない内戦状態で経済は壊滅し、中央政府が存在しない破綻国家状態が続いている。そのため、沿岸警備隊が消滅し、ソマリア沖では欧米に日本を加えた大型の外国船による大量違法漁獲が行われ、加えて、化学物質、放射性廃棄物などの廃棄により、沿岸部の漁民の仕事が奪われ、生計が立てられない。そうしたソマリア国内の壊滅状態が海賊行為を生み出させている。このような原因を考えれば、単に取り締まりや軍事力による殲滅などによって問題が解決しないことは明らかである。 9条を持つ日本がなすべきことは、憲法の平和主義に基づき、非軍事による徹底した人道支援協力・経済支援協力・技術支援協力を行うことである。ソマリアの経済、政治、人道、安全面での不安定要因に対処する包括的な非軍事的対応こそが、ソマリアの混乱終結と復興をもたらし、海賊問題を解決へと導くことに繋がるのである。 以上
【連絡先】自衛隊イラク派兵差止訴訟名古屋弁護団事務局 〒460-0002 名古屋市中区丸の内2−18−22三博ビル5階 名古屋第一法律事務所 弁護士川口創 (電話:052-211-2236 |
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