「坂の下の雲」をめざして
ご老体 : 2009/08/22(Sat) 12:29
No.108
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中塚明「現代日本の歴史認識 その自覚せざる欠落を問う」の輪読会が昨夜無事終了した。
都合7回の輪読会であったが、今回も自分自身にとって、大いに収穫のあった輪読会であった。
前回のアマルティア・センの「アイデンティティに先行する理性」が難解であっただけに、日本の歴史、しかも明治以降の歴史であるということで、事実関係は何とかわかりそうな気がして、気楽に行けるかなという気分で臨んだ。
ところが、歴史の事実を学ぶのだから比較的わかりやすいだろうという気持ちは、初回から吹っ飛んでしまった。
事実そのものが、明らかにされる過程、伏せられていた事実の提示によって、これまでの歴史認識が変わっていくことを実感した。まさに、「学者」の執念、信念と正面からぶつかった気がした。
初回から、大木がバッサ、バッサと伐採された。
あの人も、この人も、書かれた文章の中に、中塚本人が入り込んで、「自覚せざる意識」の摘出を容赦なく行なった。
半藤一利・・・昭和史の問題は満州問題と絡んで起こるという認識、「朝鮮問題」を捉えていない。 明治の人たちが頑張ってつくった国を、大正、昭和のいい気になった日本人が滅ぼした。
江口朴郎・・・日清、日露まで、世界情勢にギリギリに対処してきたが、大正以降、頭が悪くなって、虚像に踊るようになった。
高山岩男・・・明治は日露戦役で終わる。軍事が政治を占領して、破綻し始めるのは、大正、昭和の時代から
司馬遼太郎・・真打登場。韓国併合のころから、参謀本部の「異胎の時代」が生まれた。
藤原彰・・・・日清戦争時の「高陞号撃沈事件」は国際法に則るものである。
寺島実郎・・・義和団事件に際し、柴五郎中佐は、武士の精神と世界的知性を発揮した。
鶴見俊輔・・・分岐点は日露戦争が終わった1905年、それまでは賢明な指導者が国を引っ張った。
大日向純夫・・日清、日露戦争と日中戦争は戦争としての質が異なっている。
林博史・・・・第二次世界大戦は、総力戦であるが、それ以前の戦争は「軍隊」対「軍隊」だった。
今でも知識人の中に潜む「明治はよかった、悪くなったのは、大正、昭和からだ!」という歴史認識の間違い明らかにする作業を通じて、再びの悪夢、司馬遼太郎、NHKの「坂の上の雲」を断罪しようとしている、中塚さんに、半沢さんに感謝します。
今回の輪読会では、いかにして歴史と向き合うか?を学んだ、という気がする。人並みに歴史を知っているという自負なんか見事に吹っ飛んでしまった。
「甲午農民戦争」「朝鮮人民の反日抵抗」それぞれに言葉を知っていてもその一つ一つをリアルに想起できなかったことを知った。今になっても、庶民の側から物語を作り出せず、「抵抗する主体」にすら、国民性、民族性を求めるという過ちをしていることに気が付いた。
間違いなく、「日本人」であることに満足している自分がいる。これが、正直なところの我々が受けた教育であると知った。
無知の中にあって、歴史を恣意的にしか切り取れない我々にとって、今回の輪読会は、教えることの情熱の具現者としての「中塚明」と「半沢英一」さんの見事なコラボレーション。
ありがとうございました。 |
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