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原発の体系と民主主義の体系 半沢英一
フクシマの悲惨はヨーロッパに政治的大激動を起こしましたが、日本ではいまだ小激動（？）しか起こしていません。
経済産業省の異端の官僚・古賀茂明氏がテレビで今回の事故の賠償問題を論じたとき、東電は自分たちの利権を護れる自信を持っていると断言されていました。
私は脱原発を行えるのは民主主義の力、それも数あわせと自己への引きこもりの民主主義ではなく、人間の理知と尊厳を求める民主主義の力しかありえないと思っています。その民主主義の力が日本では弱い。そのためにこれだけの事故でありながら、政治的激動が起こっていない、いな、起こせないでいるのです。
５月７日の渋谷反戦デモにおける宮台真司さんの演説をユーテューブで見たのですが、宮台さんはこの問題を取り上げ、ドイツでは緑の党が躍進したのに、日本では今回の統一地方選で脱原発をかかげた候補の多くが落選していることを指摘されました（幸いなことに我等の森一敏さんは市議選でトップ当選をはたされたのですが）。そしてその原因を宮台さんは多くの市民が真実を知らされておらず、つらい真実から眼をそむけていることにあると言われていました。
それはたしかにそうなのですが、私はそういう捉え方だけでは不十分ではないかと思いました。
日本の市民が衝撃を受け、それから事実を学び、それから社会を変えようとする。このまっとうなプロセスをさまたげるものがあります。例えばショービニズムやネオリベラリズムを刷り込まれた頭脳だと、原発を止めたら止めていない中国に経済競争で負けるのではないかといった考えがフラッシュバックのように出てきます。
人間の観念は体系的なものであり、ある部分に矛盾が生じても残りの部分が生きている限り矛盾による傷の修復が始まり、覚醒は起こらずふたたび睡眠に戻ることが繰り返されることになります。
私は今回の事故で日本に政治的大激動が起こらないのは、日本人が民主主義の体系を持っておらず、日本に民主主義の体系的勢力が存在していないからだと思うのです。
また原発は単に原発の問題だけではありません。例えば『週刊金曜日』に原発推進の広告に出た文化人（桁違いの謝礼がもらえるようです）のリストが出ていましたが、その中に荻野アンナさんや宮尾登美子さんや山折哲雄さんの名前を見てやっぱりと嘆息せざるを得ませんでした。荻野さんは、国際人権規約に定められた高等教育無償化に背を向け、学生を借金地獄にするヤクザまがいのいわゆる日本学生支援機構の奨学金取り立て代弁人となっている人です（白石嘉治『不純なる教養』）。また宮尾さんや山折さんは、韓国支配のために闘われた日露戦争を祖国防衛戦争と美化した『坂の上の雲』を、韓国併合百年の年をはさんだ三年間放送するＮＨＫスペシャルドラマの脚本監修に名前を連ねた人たちです。恥を知らず金に汚い人たちが、ネオリベラリズム、ショービニズム、原発のまわりに群がっているといえるでしょう。
つまり原発を含む反民主主義の思想も人脈も一つの体系をなしている以上、民主主義の側も体系的思想と組織が必要なはずなのに、それがいまだ面的勢力として表れてはいないのが日本の現状であり、それが脱原発の大激動が起こらない主要な原因だと思うのです。
しかし憲法九条改悪を阻止した全国の「九条の会」運動のように、萌芽的ではあってもそういう動きが日本にないわけではありません。また社会が変わるのは天気が変わるようなものではなく、変えようとする人間が動かなければ変わるはずもないことです。
くるま座も脱原発を含む民主主義の体系的構築を金沢という小都市において希求したいと思います。
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