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くるま座(掲示板)

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【親記事】
アマルティア・センの輪読会が終わりました!
ご老体 : 2009/05/02(Sat) 17:11 No.65
  投稿ランキング:29回/−
うし 単独表示 アマルティア・センの「アイデンティティに先行する理性」の輪読会が昨日終わった。


4回で回数としては多くはなかったが、終わった瞬間、皆がぐったりしたようだった。
この本だけは、一人で読んでもわからないよね、というのが、きせずして出た声。
半沢さんの周到な準備の上の解説がなかったら、読み進めることもできないものだった。ある人が言っていたように、訳が悪すぎるのも、その理由の一つ。文の中に出てくる固有名詞や概念が、これまで慣れ親しんでいたものではないというのが、もう一つの理由。それ以上に、アイデンティティの概念が、これまで当たり前として使っていたものとちがって、合理的な知の上に存在するものであり、また、その知によって選択可能なものであるいうことが、理解しがたいものだったようだ。また、それを説くにあたって繰り出されるアマルティア・センの固有名詞や言葉が、解説がなければわからないことが難渋の原因だった。

終わった時、拍手がおきた。


 今日の毎日新聞に岩見隆夫のコラム記事が出ていた。近聞遠見:改めて「マッカーサー憲法」=岩見隆夫 という記事である。
 読んでいて、早速、学んだきた効果、アイデンティティの言葉で表す岩見の意識の陳腐さに反吐が出た。

 彼は、松本健一が憲法調査会で述べたことを紹介する。

 戦後生まれの評論家、松本健一は00年12月7日、衆院憲法調査会に参考人として招かれ、意見を述べた。この時、松本は「私は国民憲法と第3の開国、というふうなテーマでお話をさせていただきたい」と、同会でのほかの参考人26人の陳述と違って、<国民憲法>という新しい言葉を使っている。
 幕末維新・第1の開国のあとの明治憲法はテリトリー(領土)ゲームの時代、終戦・第2の開国による現憲法はウエルス
 (富)ゲームの時代の憲法だった、とした。
 そして、冷戦構造解体によって89年以後始まる世界史の新たなステージ(第3の開国)では、いままでの軍事力や経済力と違って、固有の文化を主体としたアイデンティティー(自己同一性)ゲームの国民憲法が必要だという。
 戦後派らしい軽やかな位置づけだ。長らく9条(戦争放棄)の賛否を中心に続けられた、重苦しいような改憲論議の呪縛から解き放たれた感じがある。

 ここで、松本が言っているアイデンティティは、これまで我々が使ってきた、民族や共同体の固有の意識として見られてきたものでしかない。この間学んできたように、それを超えた意識を生みだすことが、アイデンティティの営みとすれば、このアイデンティティという言葉を使うということは、選択余地のない固有(?)の意識の強要であるだろう。松本と岩見がアイデンティティを持ち出していっていることは、主体のない国民というものに同化しろ、ということであり、国家に意識を預けろということに他ならない。

 松本の「国民憲法」ということばが、憲法9条の呪縛から解き放たれた感じ、と岩見はいうが、これはすさまじい感覚だ。

さらに、岩見は次のように述べる。

 だが、世論調査では8割以上が憲法改正を容認しているのに、もうひとつ世間の熱気が伝わってこないのはなぜなのか。松本が言うような<時代と憲法>についての共通認識が熟していないことと、やはり現憲法誕生のいきさつがモヤモヤしたままだからではなかろうか。・・・・・・

 翌46年正月、保守的な松本試案ができあがる。だが、GHQは拒否。独自に作成されたGHQ草案をみると、天皇の象徴制、戦争放棄のほかに、国会の1院制、土地の国有化などが記されていた。日本側はこのとっぴな案に驚愕(きょうがく)する。幣原がマ元帥と会見、再考を求めると、ソ連や豪州が日本を恐れ、天皇制で激しい意見がでている。私は天皇制を維持したいから、早く(GHQ案を)受け入れることが必要だ」と妥協の意思がない。特に象徴制と戦争放棄は2大原則だ、とマ元帥は譲らない決意を示した。・・・・・

 文ごとの大詰めの調整は3月4日、GHQの部屋で行われたが、マ元帥も閣議も徹夜になった−−。

 以上の詳細は52年4月から毎日新聞に連載された<占領秘録>に記されている。現憲法は完全にマ元帥ペースで作られた。
 評価はともかく、占領中の<押しつけ>であることははっきりしている

 
さて、岩見の言う、憲法改正を8割が容認している・・・はどこから出てきた数字なのか?

 2008年4月8日の読売新聞の世論調査でさえ

「読売新聞社が実施した憲法に関する全国世論調査(面接方式)によると、今の憲法を改正する方がよいと思う人は42・5%、改正しない方がよいと思う人は43・1%で、わずかながら非改正派が改正派を上回った。・・・」と報じている。

岩見のこの言葉は、世論調査の数字を意識的に改ざんしている、といっていいだろう。

マッカーサーから押し付けられた憲法とだけ言って、8割が憲法改正を容認しているという、この岩見のあからさまな意思表明は、アイデンティティの解釈とあいまって、背筋が凍りつく。毎日新聞の上層部が、こんな風にして、世論をひっぱていく過程の先には、国家のアイデンティティは「天皇制」や「君が代」にあるということに帰結していくのだろう。


昨日の輪読会より

「今日のところは、われわれが生きているこの世界において、もっと望ましい正義の形態とはどんなものについて十分論を尽くして述べることはできない。今言えることは、これからすすむべき方向は、違った人間関係や集団を巻き込みながら互いに重なり合うような原初状態であって、相互にぴったと調和しあう局面を持つすっきりとした二層構造ではない、ということである。」  

そろそろ結論にはいろう。まず第一に、社会的アイデンティティは重要であろう。個人を自己中心的な孤島とみなす見方は退けて当然である。第二に、アイデンティティの選択に際して、合理的判断は重要な役割を果たしている。社会的アイデンティティというのは「発見」すべき事柄であって、選択を具体化する過程を伴うものものではない、という共同体主義の想定はうけいれなくてもかまわない。第三に、共同体主義が強く主張する認識論と倫理学における分離主義、およびそこにみられるような、違った文化を認知的なあるいは道徳的な孤島として扱う傾向とに対して疑いの目を向けてみよう。第四に述べたのは、ロールズの正義論の取り組みは、共同体主義の批判に十分対抗しうるしっかりしたものだ、ということである。

 最後に、共同体主義の批判のみならずロールズの取り組みも、国籍や市民権にかかわらないものをも含めて、われわれの多様な帰属性やアイデンティティをあつかうにあたっては、もっと選択と合理的判断の余地を設けておかねばならない。

これがこれからの私の判断基準をなすことは間違いないだろう。

「人権と尊厳」、他者へのかかわりの原点であろう。

改めて、世界人権宣言を

第一条
すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもつて行動しなければならない。

第二条
1 すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。
2 さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない


これらの宣言の前で、岩見たちの言動がいかに貧しいものであるかを知る。

明日は憲法記念日だ。胸を張って歩くぞ。

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【レス記事】
若者に申し訳ないなぁ
usya : 2009/05/02(Sat) 19:49 No.66
  投稿ランキング:1回/−
ねずみ 「アイデンティティに先行する理性」の輪読会,1度も参加できなかったのですが、ご老体のお話を読んでいると参加しなくってよかったかな。>
>
> 最後の世界人権宣言第1条をまたしみじみ読ませていただきました。 本当に人間はみんな平等であるべきなんですよね。
でも世間がゴールデンウィークと浮かれているとき、3月の完全失業率が4.7%になったと聞きました。中途半端失業率を調べたらどんなに大きな数字になるかと思うとぞっとします。
特に今の若い人の置かれている状況はいろいろ報じられてもいますが、2000年以来景気がよくなっている良くなっている、営業利益がどこの会社も増えているとの政府発表を鵜呑みにしておじさんおばさんがナゼと問うことをしないできた付けが 今の若者たちに回されているのかと思うと申し訳ない思いです。

30年,40年前に社会に出た人たちは普通に勉強して普通にサラリーマンになれば少なくともGWになんとなく浮かれてすごすことはできたでしょう。私はその時代の人間です。

憲法記念日を前にして、ご老体の投稿の世界人権宣言を読んでそんな思いを持ちました。
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